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飼い主とペットの幸せのために、ペットの健康を考えた住まいと生活を
成城こばやし動物病院 小林元郎院長

自分が飼う動物の特性や、起こりやすいケガや病気から、ペットと暮らす家を考えることも大切です。

ペットの健康のエキスパートであるのが獣医師。東京・世田谷区にある動物病院「成城こばやし動物病院」の小林元郎院長は、「私の病院のある世田谷区は都内でも意識の高い飼い主さんが多いエリアだと思います。」とポツリ。その言葉から読み取れるのは、ペットの健康を守るためには、飼い主の意識が不可欠だということです。

そんな小林院長に、ペットの病気やケガの予防から考える「家づくり」について、アドバイスをいただきました。

大切なのは、自分のペットに合わせた住まいであること。それを念頭におきながら、いくつかのチェックポイントを落とさないようにしましょう。

ペットの健康から、住まいを考える

ペットの健康を考えた住まいとは、どんな住まいなのでしょう?

コレ、と言い切ることが難しいです。なぜなら、「ペット」には個体差があるから。「自分が飼う動物に合わせた住まい」が、自分のペットの健康を考えた住まいと言えるでしょう。

「自分が飼う動物に合わせた住まい」の部分をもう少し詳しく教えてください。

動物は、種類や大きさによって特性があるので、それに合わせた住まい、ということです。例えば体の大きさについて、犬だったら「大型犬」なのか、「中型犬」なのか、「小型犬」なのかで必要な家の広さや理想的な家具の配置が違ってくると思います。加えて、毛が抜ける犬種なのか、そうでないのかというのも特性の一つです。

犬は足の肉球の間に毛が伸びていると踏ん張りがきかず歩きにくいでしょう。また、飼い主さんと何かを引っ張って遊ぶのが好きな犬にとっては、床をツルツル滑って思うように遊べないというのも好ましくないですね。踏ん張った時に、床に傷がついてしまうこともあるでしょう。基本的に、床材はペットが滑らないものを考えてあげたいですね。

さらに、室内に限らずその子に適した運動量を守れる環境かどうか?というのも気にしたいポイントです。

近年は、犬や猫を室内で飼うことがほとんどになっています。室内で起こりやすいケガについて教えてください。

どんな家か、どんなペットを飼うかによってまったく異なりますが、今お話した「床すべり」によるケガやからだへの負担は目立ちますね。床がフローリングで滑って事故に繋がったり、そもそも歩きにくかったり。滑りながら歩いているような状態が長年続くと、関節に負担がかかります。そういう場合は、年をとってから腰を痛めてしまうなどの健康障害につながってしまいます。

それと、犬と猫では全然違います。猫は上下運動の動物です。上に登りたがりますので、「キャットウォーク」を上に設けてあげるなどするといいですね。自然界にいる猫は、木の上などでの生活時間が長いですよね。上の方が本能的に安全と感じるのでしょう。そういった「動物が安心できる場」は是非設けてあげてほしいと思います。

あと、爪の破損事故は犬猫に共通に見られます。よくあるのが、爪を絨毯に引っ掛けてしまい、折れてしまったり、特に室内犬の場合は散歩によって爪が正常に削れることが難しく伸びすぎによる事故には注意しましょう。ネコの場合、爪とぎ場は必須ですね

ペットの健康を考え、住まい環境を考えるとしたら、どんなことに注意したら良いのでしょうか?室内でペットと暮らす時に気をつけたいペットの病気や、健康トラブルと合わせて教えてください。

住まいの環境としては、「シックハウス症候群」、「温度と湿度」、それと「匂い」に注意してほしいと思います。これら3つを考えると、建材や資材に注意が必要になりますね。

※ シックハウス症候群とは
建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染によって、健康に障害を起こしている状態のことです。その症状は、目がチカチカすること、鼻水やのどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹などさまざまです。近年、住宅の高気密化が進むことによって、化学物質が室内に留まることが原因で引き起こされるケースも増えています。

「シックハウス症候群」の原因となる物質が比較的低い位置に留まることが多いため、ペットに悪影響を及ぼしてしまうことがあると言われています。

また、犬や猫は人よりもずっと匂いに敏感な動物です。こまめに窓を開けて空気の入れ替えをするなど、室内の空気環境に敏感になってあげるといいでしょう。

これらのことを踏まえると、シックハウス症候群を抑えられる建材や資材、家具を用いた家に住むことが何よりですが、難しい場合も多いでしょう。そんな時は、やはり換気などで汚染された空気を室内に留めないことです。

「温度と湿度」というのは、どういうことでしょうか?

「温度と湿度」は、ペットが快適に過ごせる状態を保つ意識を持つ、ということです。例えば最近では、留守の間でも、温度や湿度をコントロールできるシステムがあります。ウェブ経由で室内の状況をウォッチングしたり、カメラと連動して温度・湿度を管理調整したりできる「見守りカメラ」などを有効に活用することをおすすめします。そうすれば、留守中もペットにとって快適な環境を保つことができます。

夏場など、室内の温度が上がりすぎると冷房を使うことも多いですよね。冷たい空気は下に溜まります。ですから、室内で冷房を入れているとき、人間は大して寒くなくてもペットが冷気を受け、寒がっていることもあります。それによって体調を崩してしまうということも少なくありませんので、サーキュレーターを用いるなどして、室内で空気を循環させることを意識してください。

また、湿度は60%くらいがベストだと私は考えます。それ以上乾くと、感染症のリスクが高まりますし、あまりジメジメしていると呼吸が苦しくなったり皮膚病のリスクが高まります。
いつも快適な状況をつくることは、ペットの健康を保つことにつながります。

ペットの健康を考えると、過ごしやすい住まい環境、空気環境がとても大事ということですね。

そうですね。加えて、猫の場合はもう一つ、トイレについてのケアが必要です。猫は綺麗好きかつ、テリトリー意識が犬よりも強い動物です。室内で猫を飼う場合は「猫の数プラス1つ」トイレを用意してあげてほしいと思います。つまり、1匹だったらトイレは2つということですね。特に、2匹の猫を室内で飼うとき、トイレが1つになると、どちらかが我慢するなどして体調を崩すことがあります。体調を崩すまで行かずとも、我慢をしている状態と考えると、快適とは言えないですよね。

規則正しく、清潔な生活環境を

ほかに、ペットの健康を守るために飼い主が毎日の暮らしの中でケアすべきことを教えていただけますか?

住まいの設備や間取りのお話ではありませんが、規則正しい生活をさせることは重要です。そのために、飼い主の都合で散歩に行ったり行かなかったりせず、毎日なるべく決まった時間に散歩をしましょう。動物は毎日同じことが繰り返されるのが大好きな生き物です。リズムが崩れると、「今日はなんで散歩に行かないのかな?」とストレスになってしまいます。

加えて、食生活にも注意を払いましょう。近頃は、栄養の摂りすぎで肥満傾向のペットが目立ちます。人々の生活が変わり、それと並行するようにペットの食べるものや生活も変化しました。太りすぎてしまうと、ペットも人間と同じく生活習慣病のリスクが高まるということを覚えておいてください。

食事内容はどんなことに気をつけたらよいのでしょうか?人間と同じ食べ物は、やはりNGですか?

そうですね、人間と同じものは与えない方がいいと思います。人間と動物は、必要な食事の中身が異なります。そして何より注意すべきはカロリーです。人間と同じものを食べることで、動物は簡単にカロリーオーバーし、肥満に繋がります。肥満を入り口に、生活習慣病に繋がってしまうのです。

私の病院ではペットの飼い主さんたちの意識が高く、きちんと食事を分けていらっしゃる方がとても多いです。「人間と同じものを食べさせないのはかわいそう」ではなく、ペットの健康のために、きちんと食事の管理をしましょう。

「規則正しい生活」という視点から、睡眠については何かケアすることはありますか?例えば、明かりなどはどうでしょう?

普通の人間と同じリズムであれば、睡眠時間の長さについてはそれほど細かく気にすることはありません。「就寝時の明るさ」という点で言えば、薄暗い方がペットは落ち着くでしょう。ペットは人間と異なり、暗闇でもある程度の視力がありますのでね。

なるほど、ありがとうございます。室内環境がもたらすペットへの健康被害についてお話いただきました。最後に、住まい全体について言えることがあれば教えてください。

室内を清潔に保つためにも、外から帰ってきたときに足を洗える設備があるといいですね。ペットも清潔な方がストレスを感じず過ごせるでしょう。

あと、細かな点ですが、猫がカーテンを登ろうとして落下してしまう事故や、子犬や子猫がコードをかじってしまう事故がときどきあります。子犬や子猫は小さなものを誤飲してしまったり、食べてはいけない食材を食べて中毒を起こしてしまったり、人間の薬をかじって朦朧としてしまうというケースもありました。ペットが食べてはいけないものを食べさせないようにするのは、人間の役割です。

ペットと暮らす住まいそのものはもちろん、暮らしの中身も重要ということですね。

はい。住まい環境は自分のペットが快適かどうかを基軸に。家の中すべてをペットが快適に過ごせる空間にするというのは難しいものなので、例えば一室だけでも、いつもペットが休める場所を作ってあげられるといいと思いますよ。

ありがとうございました。