LINEで送る
Pocket

ペットと暮らす住まいのポイントは、ペットに問題行動をさせない環境づくり|「N・WanCLUBワンコのひみつきち」佐々木尚子氏

佐々木尚子様 インタビュー風景

「ペットと暮らすなら、しつけをきちんとしなければ」「ペットが問題行動を起こすのは、しつけのせい」とは、多くの飼い主さんが思いがちなこと。

「犬の幼稚園」は、おすわり、ふせ、まて、などの指示にきちんと対応できるようになることはもちろん、家庭内での毎日の暮らしに必要なマナーやしつけをサポートするしつけの専門施設。
今回は横浜本牧の「N・WanCLUBワンコのひみつきち」の代表をしており、ドッグトレーナーとして日々ワンちゃんと接している佐々木尚子さんに、住まい環境やペットと暮らす際に飼い主が注意すべきことを教えていただきました。

ペットと人間が、互いにストレスなく快適に過ごすために、私たちが「住まい環境」の点から気を配れることとはどんなことなのでしょう。

一緒に暮らすペットに合わせた、広さ、間取り、近隣環境。

佐々木尚子様 インタビュー風景

犬を家族として迎えるお家について、抑えておきたいポイントとその理由を教えてください。

まず、住宅ありきでペットを考える場合と、すでに飼っている場合とで分けて考える必要がありますね。

「家を買ったから犬を飼おう」など、住宅ありきでペットを考える場合は、間取りや家の広さによって、小型、大型、中型など、ペットの大きさを考えるといいでしょう。一軒家の場合は、1階で過ごすのか、2階なのかというのも大事ですね。大きい犬などは年をとってくると階段の上り下りがしづらくなります。10kgほどまでの犬であれば、抱いて階段を移動することも可能ですが、それ以上だと人間もとても大変になりますよね。上り下りがしづらくなる前に、対策を立てておく必要があります。

佐々木尚子様 インタビュー風景

すでに飼っているのであれば、犬の大きさ、犬種にあわせ、暮らしやすい家を考えられるといいでしょう。すでに飼っているワンちゃんは、引っ越してからのケアがポイントになります。

引っ越してからのケア、は具体的にどのようなことでしょう。

一番起こりがちなのは、排泄場所のトラブルですね。犬は、言葉で覚えるのではなく、習慣で覚える生き物です。ですから、その習慣が崩れるという意味で「新しい家に引っ越したら、トイレができなくなってしまった」というのはよくあることです。

たとえば、マンションから戸建てに変わるという時、「今度のお家はお庭がついているから、お外でトイレをさせたい」と飼い主さん。しかし、犬はこれがすぐにうまくはできません。

どんなふうに、新しい家のトイレに慣れさせれば良いのでしょう?

大切なのはトイレの場所です。犬は人間と違って間取りがわかりません。「新しい家になったらトイレがわからなくなった」となると、それまでできていたトイレができなくなります。

「トイレはなるべく目につかないところにしたい」と考えがちですが、最初はできるだけリビングなど人がそばにいるところに置いてほしいと思います。なるべく普段いるところの近く(犬はトイレが近い方がラク)において、できたら褒めてあげるなど、“ゼロからトイレトレーニングをし直す”意識でトレーニングしてください。

できるようになってきたら、一日30センチくらいずつ移動させましょう。犬はトイレを“場所”で認識している可能性が高いです。ですから、一気に移動させるとまたわからなくなります。見える範囲で少しずつ、根気よく行うことがポイントです。

また、他のやり方としては、トイレの合図を決めてトイレをさせることを習慣づけることも手です。例えば、トレイシートを広げたらそこでトイレをすることをクセ付けたり、「シーして」と言ったらお庭に出てトイレをしたり。だいたい1日4回程度の排泄でもおおよそ足ります。 ※ 個体差があり、年齢、飲量、季節による
「おしっこしてほしい」と思うタイミングでトイレをさせることを習慣づければある程度環境が変わっても失敗しない子になるでしょう。

佐々木尚子様 インタビュー風景

このようなトレーニングは子犬の頃に行うと早くクセづけることができるもの。トイレシートを広げる合図やトイレを促す言葉で「今ここでしていいんだな」と犬が思えるようになること。そして、合図でトイレをすると褒められること。場所ではなく行動で覚えさせていくことがベストと言えるでしょう。

失敗ばかり繰り返してしまう時は何を見直したら良いと思いますか?

普段の行動範囲が広すぎるのかもしれませんね。ですから、行動範囲を狭めること。あまりに広くてお家が複雑だと、犬は混乱してしまいますから。

犬の失敗の問題には原因があります。犬たちにすれば、失敗する理由がある。犬は理由のない行動をしませんから、理由があってその行動をしていると考えるべき。教えてあげることに加え、導いてあげるのが“しつけ”です。

なるほど。「トイレ」以外でよくあるトラブルはどんなことでしょう。

近隣の方への配慮が必要になると思います。例えば、お庭でワンちゃんを遊ばせる時に、隣家の方があまり動物を好きではなかったり、犬が苦手という場合もあります。また、他の犬や人を見て吠えることだってあります。飼っている犬が吠え癖のあるコでなくとも、犬は狼が祖先。片方が吠えたら、もう一方も吠える習性がありますし、さらには姿形が見えない犬たちさえも吠え出してしまうことだってあります。

また、家の前を毎日マラソンする人がいたり、子どもが頻繁に通る場所というのも、犬が吠える原因になります。これも、犬の習性ですね。犬は本能に従って正しい行動をしているだけです。気になる、トラブルになるのならば、対策を考えましょう。

特に長毛種の庭でのブラッシングは、近隣住民へのクレームに繋がることがあります。被毛の飛散には気をつけましょう。

この場合にはどのような対策が必要と考えますか?

犬を飼うなら大通りには面さない場所や、人目につきにくい場所というのがベストですが、なかなか難しい場合は目隠しとなる柵やフェンスなどを考えましょう。フェンスの網は細かく丈夫なものがベターです。中には、柵やフェンスの下に穴を掘って外へ出ようとする犬種もありますので、ペットの特徴に合わせた柵を設けてくださいね。

佐々木尚子様 インタビュー風景

覚えておいてほしいのは、犬は無駄吠えはしない、ということです。理由があって吠えています。それは、動物の行動学から明らかになっていること。犬を飼われていない人からのクレームなど近所迷惑となるトラブルになってしまうのは犬にとってアンフェアです。例えば、犬にとって吠えるのはお仕事。赤ちゃんが泣くのと同じくらい自然なことなのです。それを知った上で住まい環境を考えられれば、アンフェアをフェアにつなげられると考えます。そうすれば、ペットと飼い主のストレスも減りますよね。犬に問題行動を起こさせない家というのが、理想の家だと考えます。

佐々木尚子様 インタビュー風景

動物の行動学、興味深いです。他に住まいでケアしてあげるべきことはどんなことがありますか?

まず一つ目に「寝る場所」に関することがあります。

環境が変わり、例えばそれまで単身(ワンルーム)暮らしていた人が結婚でパートナーができた時、それまで一緒に寝ていたワンちゃんに別の場所で寝ることを強制するなどします。すると犬は状況が理解できず、「なぜ?」と混乱してしまうでしょう。それがストレスになり、問題行動が増えてしまうことがあります。

1頭にされる事に過度に不安やストレスを抱え、問題行動を起こすこと。それを「分離不安」といいます。引っ越しをし、ただでさえ空間の匂いや場所といった環境が変わって不安なところに家族も変わるとなったら、犬はそれだけで手一杯。これまでの行動を変えるよう要求されることは、とても大きな負担になります。

佐々木尚子様 インタビュー風景

犬にも個性があります。特に不安を強く感じるナーバスなコなら、最初の1週間は同じ部屋で寝たり、飼い主がリビングで一緒に寝たりなど、一緒にいてあげることが大事です。つまり、突然引き離すのではなく、少しずつ変化させること。夫婦に子どもができて、ペットを別の部屋で寝かせたいという時も同じで、いなくなる時間を徐々に増やして行くアプローチが良いでしょう。

犬の行動習性と個性に合わせた生活の仕方を考えるということですね。

あと、犬と人はコミュニケーション手段が異なることも改めてお伝えいたします。人間は目(視覚)からあらゆる情報を得ますが、犬は鼻(嗅覚)。鼻でものを見て、ものを感じます。目は色の感知もほとんど見えていませんし、遠近感や距離感といった感覚を掴みづらい器官です。その点からしても、視覚に頼る人と嗅覚が発達して鼻で識別する犬はまったく異なった視点を持つということを改めて覚えておいてください。

そうして鼻で相手の行動を察して、自分の振る舞いを決定するのが犬です。だから犬には「犬好き」と「犬嫌い」がわかる。犬嫌いな人の緊張時に分泌される汗やホルモンの量やボディランゲージを犬は感じとります。基本的に争いが苦手な動物ですので、よっぽどのことがない限り、攻撃的な態度には出ませんよ。

佐々木尚子様 インタビュー風景

繰り返しになりますが、犬の行動に問題が見受けられるとしたら、何か原因があるということですね。それはコミュニケーションのすれ違い、なのかもしれない。

そうですね、犬はコミュニケーション手段が言葉ではありませんから。犬の発信は耳と尻尾です。

また、最近のワンちゃんは、生まれてすぐペットショップで売られ、人と一緒に暮らすことが多いため、犬同士のサインを学ぶ機会が非常に少ない。すると、犬らしくない犬が増えたり、ほかの犬を知らないから、犬を見ただけで吠えたりします。わたしが「犬の幼稚園」を主催しているのも、ほかの犬を知る機会が少なかった犬たちに、ほかの犬を知る場を与えたかったから。そうする中で本来の犬が持っている良さを引き出したいと願っています。

本来犬が持っている良さ、ですか。

佐々木尚子様 インタビュー風景

はい、人も同じですが、犬だってのびのびといられる方が幸せですし、ストレスが少ないと健康状態も良くなります。本能が満たされることで余計なことをしなくなるため、問題行動も減っていきます。いい意味でのエネルギーの発散が犬にも必要なのです。そのコたちが楽しいと思える方法で遊ばせながら気づかせる。「犬の幼稚園」はそういうところです。

犬の問題は犬だけの問題じゃないこと。犬が持っている良さを引き出してあげられる環境こそ、ペットと人にとって最適な住まい環境ですね。ありがとうございました。

佐々木尚子様 インタビュー風景